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2022.06.10

#高原別荘地の動物たち - ニホンジカ - 野鳥 - 虫

動物がやってくる庭 〜その1. どんな動物がやってくる?〜

まだ寒さが残る5月、私が住む標高約1750m~のエリアにはほとんど人がいなかった。
しかし、6月になり暖かくなり始めた頃、私の家の隣の隣の隣の家にどうやら人がやってきた。

それにいち早く気づいたのはうちの愛犬だった。

うちの愛犬は甲斐犬(以下、ヤマト)という猟犬である。
両親がヤマトを連れて遊びにきた時、あまりにも目を輝かせて「山が好きでたまらない!」という雰囲気を出していたので、この別荘地に置いて帰っていた。

両親はかなり寂しそうだったが、「実家のニュータウンにいるより幸せだろう」という愛が故の判断であった。

この猟犬は野生動物をみつけるとすごい速度で追いかける。
そんなしつけをした覚えはないのだが、遺伝子というのは面白い。

ある日の散歩中、ヤマトは鹿を見つけてあまりにもすごいスピードで追いかけていってしまった。

日本では動物愛護法の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」において、人に迷惑を及ぼすことのない場所を除いて、犬の放し飼いは禁止されている(ただし、あくまでも動物の所有者および占有者の努力義務とされている)が、
野生動物を目を輝かせて追いかける姿は個人的に素晴らしい光景だと思うし、このエリアは人がほとんどいない森だし、飼い主からはあまり遠くへは離れないし、しばらくしたら帰ってくるタイプなので、
言い訳が長くなったが、私は先に家に帰ってヤマトの帰りを待っていた。


しばらくすると満足そうに帰ってきたが、ただちょっと帰りが遅かった。
ヤマトの首輪につけているGPSの履歴を見てみると、どうやらある場所で長い時間くつろいでいたのだが、
その日は気に留めずにいた。

その出来事を忘れかけていた頃、突然その謎が解けた。

いつものように散歩していると、とある紳士が
「クロベエ、前うちのデッキに遊びにきたよ〜。」
と話しかけてきた。

なるほど、以前ヤマトがくつろいでいたのはその紳士がいる場所だったのか。
そして仲良くなったらしい。
ちゃっかり名前もつけられているし。

その紳士はワニべさんという方だった。
ワニべさんは、寛大で優しい動物と自然が好きなお方で、
デッキにヤマトが突然遊びにきたのが嬉しかったと言ってくださった。

ワニべさんは、ほとんどの時間を自分で作った立派なデッキでゆったり過ごしているのだが、
しばらくすると、ヤマトの散歩中にデッキの上から「一杯どうですか」声をかけてもらえるようになった。


その時はワニべさんちのデッキで一杯やるのだが、そのデッキには実にいろんな野生動物がやってくる。
うちの愛犬も含め。

24時間いろんな動物がやってくるので、一枚で昼と夜を表現してみたかったのだが情報量がやや多くなってしまった。
勿論、野生動物がたくさんいる環境だからという理由もあるが、花の種類、鳥の水場、ネズミが潜む場所など観察していると「動物集まりポイント」がたくさん見つかって面白い。

現段階でみつかった動物集まりポイントは以下。

[動物集まりポイント]
 ・およそ20種類の草花を植えたり飾ったり
 ・さまざまな形の平皿や花瓶に水が溜まって鳥の水浴び場・水飲み場に
 ・薪棚はネズミの住処に
 ・デッキの手すりや机の上にひまわりの種
 ・大きなコメツガの根っこに大きな樹洞
 ・デッキや薪棚、道具小屋を作った時の端材が沢山転がって虫や小動物の隠れ家に
 ・庭はほぼ原生の樹木が占める(コメツガ、オオシラビソ、ネズコ、ダケカンバ、シラカバ、カラマツ、ヒメコマツなど)


[ワニべさんちにやってくる虫や動物]
 虫:ヒョウモンチョウ、アサギマダラ、クモ、ガ、ハエ、アリなど
 哺乳類:タヌキ、ハクビシン、キツネ、リス、ヤマネ、ネズミなど
 鳥類:ウソ、ハト、シジュウカラ、ヤマガラ、カケス、フクロウなど


[デッキにある草花]
 ・ヒヨドリバナ
 ・フジバカマ
 ・クガイソウ
 ・ホタルブクロ
 ・セルシアスマートルック
 ・オミナエシ
 ・グラジオラス
 その他道端でとってきた多種多様な雑草

ただ、ネズミには手を焼いているらしい。
花瓶の中にネズミがひまわりの種を蓄える習性があるらしいが、雨の日の後、たまにネズミの死骸が浮かんできたり、人間の食べ物を食べたり、米袋の中にネズミの糞があったり、、、
たしかにちょっと厄介かもしれない。

そういう、やってきてあまり嬉しくない動物と、むしろやってきてほしい動物がいるのは面白い。

勿論、全ての生物がウェルカムというわけにはいかないだろうが、いわゆる都会や郊外の住宅地よりは、
「動物にきてほしい」という意識を持っている人は多いように思う。
もともと自然や動物好きタイプの人が別荘地にやってくるという側面もあるだろうが、
別荘地の豊かな環境がそういう気持ちにさせる側面もあるのではないだろうか。

実際、この別荘地に来てから虫が嫌じゃなくなったとか、巣箱を庭に設置してみただとか、動物との境界線が薄くなっていっている人の証言をいくつか聞いた。

もし、この別荘地の環境が人々の心境に変化を与え、動物との境界線を薄くしていくのならば、
「来てほしくない動物」と「来てほしい動物」の線引きがなくなって、もっと多くの動物も許容できるようにならないだろうか。

あえて誘き寄せることを勧めているわけではなく、
邪魔だから・不快だから・危害を加えるからという理由で防護ネットを張ったり、防虫スプレーを撒いたり、粘着シートを仕掛けたりの「対策一点張り」を、
来ても構わない場所を作ってあげる、目を瞑れる悪さなら少しは許してあげるなど、もう少しこちら側も譲ってあげる「妥協型」に変えてあげるだけで、目には見えない何かが少しは良くなるのではないか。


また、次回は、「人間に頼った生活を野生動物に習慣化させることが自然の中で生き抜く力を弱くする」などという指摘がある動物に人間が食べ物を提供する行為
すなわち、"餌付け"が本当に野生動物のためになっているのか、むしろ何か問題はないのかについて考察する注1)


注1)  やや的を絞って、"野鳥と人間の関わり"について取り上げる。