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2023.04.01

#人々の生活と知恵 #植物とのつきあい

クマザサは厄介者なのか?

蓼科高原別荘地にはクマザサが繁茂している。

クマザサは地中に広く根を張り巡らせ、
ある程度の暗い環境でも生育でき、
雪の中でも枯れずに耐え抜く、とても生命力の強い植物だ。

根を伸ばしてあらゆる場所へ侵入してくるし、刈っても暫くするとまたにょきにょき生えてくる彼らに頭を悩ませている住民は多い。

ササを刈る頻度が多い(年に3回程度)と、次第にササの繁茂を抑制させることができるため、せっせとクマザサを刈っている人をよくみる。
ちなみに、ササが光合成を行う夏に刈ると効果的だそうだ。

クマザサにはそんな厄介者のイメージがあったが、実は動物にも人間にも様々な利用がされている有用植物なのだ。

ある日私は、別荘地に暮らす「暮らしの達人」の家に遊びにいった。
遊びに行くと、いつも「一杯お茶でもどうですか。」と言ってくれる。

その日も、テーブルの上にあった、綺麗な緑色の香りのいいお茶をカップに注いでくれた。

緑茶だと思うと、なんだか緑茶よりさっぱりしていて爽やかで、しかし香ばしい。

 「どこのお茶ですか、これ。」
 「僕が作ったクマザサティーだよ。」

私の中のクマザサのイメージが一変したのがその時。
無尽蔵にいつだってあるクマザサは厄介かもしれないが、でもそのおかげでいつだってこの美味しいお茶が飲める。
 
● 健康隈笹茶の作り方 ●
別荘地に生えているクマザサの葉(新芽の方が美味しいらしい)を、たくさん採る。
それを水洗いし、はさみで一センチぐらいの幅で切って、フライパンで中火で煎る。
すると笹の葉の香りが広がり、葉が丸まって茶色っぽくなっていく。
煎り過ぎて苦みが出てしまう前に、火を止めて完成。
煎れる時は、水から煮出す。沸騰してから弱火で5分くらいすると香りが出て美味しい。

ある日、茅野市のスーパーで「クマ笹のど飴」を見つけた。

クマザサエキスを配合した喉に優しいキャンディーで、
すっきり爽やかで香ばしくて美味しかった。


ちなみに、、、
こののど飴は、クマ笹関連製品の開発・製造・販売を行っている「大和生物研究所」のクマザサエキスを使用しているらしい。
この大和生物研究所は、蓼科高原の標高約1,200mに生産本部を持ち、高山に自生するクマ笹を採取して、生のまま使ってるそう。

そして、その工場敷地内に120種の笹がある「蓼科笹類植物園」がある。
クマ笹のど飴をなめながら、笹を五感で感じに行った。

殺菌効果のある笹を寿司の下に敷いたり、
笹の葉を網目や模様に切った寿司に添える「笹切り」や、
寿司飯と寿司種をクマザサの葉でくるんだ笹寿司など、
生のササは寿司と相性がいいようだ。

クマザサを使った食品を調べると他にもいろいろあることを知った。

・ササ塩
・クマザサ青汁
・クマザササプリメント
・クマザサ粉末、クマザサエキス(健康補助食品として飲み物に溶かして摂取する)
・ペットのヘルスケアサプリメント(ペットのための自然健康食品。食事や水に混ぜて与える)

このように、ビタミンやミネラルなどの栄養素がバランス良く含まれており殺菌作用も強いクマザサは、様々な保存食やサプリなどに利用されている。
また、クマザサ日本では古くから民間薬として売られており、万病に効く薬草として扱われてきたそうだ。

クマは冬眠に入る前にクマザサをたっぷり食べ、十分な栄養を蓄えるそうだ。

また、標高が高い地域におけるシカの越冬期の主食はササである。

ウグイスはクマザサの枯れ葉を材料にして営巣する。

それは、ウグイスに托卵するホトトギスにも関わる話である。


2009年1月14日の長野日報の記事によると、茅野市のお布団屋さん向山寝具店で「クマ笹枕」が信州匠選に認定されたことがあったようだ。
記事には「クマザサは安眠効果があるといわれ抗菌・消臭効果も実験済み」とある。

その他、クマザサの消臭効果を利用し、布袋の中にクマザサの繊維質を詰めた「靴の臭い取り」も販売されていたことがあるそうだ(2011年8月17日長野日報より)。

笹は強風でも折れにくく、防風・防音効果がある。
さらに地下の根が丈夫なため、地盤を固め、崖崩れや地震に対しての予防としても有効だそうだ。

また、クマザサは葉の美しさを観賞するため、庭園や公園に栽培されることがある。

生命力が強いからこそ疎まれるクマザサだが、生命力が強いからこそ人も動物も利用できる効果がいっぱいなのだ。


[参考]
"クマ笹について". 一般財団法人 蓼科笹類植物園. tateshttps://tateshina-sasa.com/about/, (参照 2023-03-30).
株式会社大和生物研究所HP. https://daiwaseibutsu.co.jp/overview.php, (参照 2023-03-30).