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2022.07.10

#蓼科の暮らし日記

0. 自己紹介です。

2022年4月より、東京大学生産技術研究所 林憲吾研究室が、蓼科高原別荘地に期間限定のサテライトラボを開設しました。

林憲吾研究室HP

そのサテライトラボに林研究室の修士課程の大桐佳奈が住み込み、

①自然破壊の元凶とも捉えられてきた大規模な開発地である別荘地は、開発自体はそこまで悪くなかったのではないか。
 むしろ、生物多様性注1)を高める環境のポテンシャルがあるのではないか。
②しかし別荘での生活の実態は、豊かな環境にマッチしない資源依存・都市型の生活ではないか。


と仮説をたてて研究しています。


①について、
開発時には「生物多様性を高める」という意識など存在しなかったはずですが、

・別荘地は一般的な住宅地とは異なり、周辺の自然環境が購入者への訴求力ともなるため、
 起伏に富んだ地形が維持され、植生も豊かである。
・別荘で生活する人には、自然環境への関心が高い人や、薪ストーブを利用し、
 薪割りなども自分で行う等、周辺の資源と結びついた暮らしを営む人が多い。
・庭の手入れは資産価値向上にもつながるため、各々の別荘地で数十年というスケールで
 時間をかけて庭を形成していく住民が多い。


など、開発の歴史や利用のされ方に特徴があります。
その特徴が無意識的に生物多様性を高めている、もしくは、そのポテンシャルがあるのではないかと考えます。

(2022.7.10時点)
しかし、自然環境への関心が高い人が多く、環境負荷が少ないような暮らしが営まれているように見える一方で、

・別荘地にマスタープランがないために、各々がイングリッシュガーデンや和風、北欧風などに作り替え、
 現地の植生が無視されることがしばしばある。
・一般的に綺麗でかわいいと認識される鳥類には餌箱や巣箱を設置して観測したがる人が多い一方で、
 損害を与えるキツツキやシカなどに対しては対策にしか意識が向いていない。
・週末や長期休暇に訪れても、自然を見ることはあっても関わることは少なく、また、
 居住者同士の人付き合いもほとんど無いなど、各家庭で閉じた消費型の生活になってしまっていることが多い。
・野鳥の保護目的よりは、個人の楽しみのために設置している餌台には、置く餌の種類に偏りがあり、
 一部の種類の野生動物の個体数が増える恐れがある。
・「避暑地」という特性上、自然の中に餌が豊富な春〜秋にかけてに野生動物に餌を与え、
 反対に、最も餌が必要となる冬には餌が与えられない。


など、自然豊かな環境の中でもやはり都市的な暮らし方も垣間見え、その環境と人間の生活のズレが環境にストレスを与えてしまっている可能性もまたあると考えます。



豊かな環境と人間の生活が調和し一種の循環が生まれていたかつての里山のように、
環境にポテンシャルがもしあるのならば、その環境と人間の生活がぴったり調和すれば、もっと別荘地は日本の中で意義のある場所になっていくのではないか。
近年、単なる避暑地やリゾート地としての性質だけではなくなり、変わりゆく別荘地で、どういったことをしていけばいいのか。


そういった思いを持ちながら、
フィールド調査や日々の生活の様子を綴り、
別荘地の動物と人間の関わりや、知られざる蓼科別荘地の姿を解き明かすブログです。


制作:大桐佳奈(東京大学大学院工学系研究科修士課程)
協力:アルピコ蓼科高原リゾート株式会社



注1) 
本研究での生物多様性とは、、、二つのレベルの多様性。
①生態系の多様性・・・里地里山、海、河川、湖、まち、など様々な環境があること。
→ 各地に様々な生態系タイプがあって、それぞれ重要。例えば熱帯の生態系、原生林の生態系というのは明らかに重要そうだが、「別荘地の生態系タイプ」というのも案外重要なんじゃないか。
②種の多様性・・・動物や植物、細菌などそれぞれの種類が生息していること。
→ 別荘地の特性が種の多様性を高めているんじゃないか。