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2022.07.05

#高原別荘地の動物たち - 野鳥

動物がやってくる庭 〜その3. 自然に野鳥が集まる庭づくり〜

前回、「人間が餌を与えることで野鳥を庭に招くのではなく、ゆくゆくは多様な木の実がなり、虫たちもたくさんいて、それを鳥たちが食べるという自然の流れがそれぞれの家の庭でできればいいと思う。」
と述べた。

では、自然に野鳥がたくさんやってくる庭とはどういった庭なのだろうか。

「動物がやってくる庭 〜その1.   どんな動物がやってくる?〜」という記事で、ワニベさんという方のデッキを紹介させていただいた。

そのワニベさん家のデッキ及び庭にはそのヒントが詰め込まれている。
なのでワニベさん家のデッキと庭を、野鳥との関わりの観点からもう一度より具体的に分析させていただこう思う。

それにあたって、今回以下の書籍を参考にした。

著者:藤井幹、井上雅英 発行:2013年2月28日 出版:株式会社誠文堂新光社
この本にまとめられている野鳥が集まる庭のポイント5つを評価軸として、ひとつずつ見ていこうと思う。

[野鳥が集まる庭のポイント5つ]
 ①水場をつくる
 ②木を植える
 ③餌を置く
 ④小動物の住処をつくる
 ⑤巣箱をかけてみる

水場というのは、鳥が水を飲み、体をきれいにする水浴びを行うための場所だ。

鳥の体温は約40度と人間よりも体温が高く、寒さに弱い。
汚れたまま水浴びや羽繕いをしないでいると、羽毛の構造は乱れ、土や埃で傷み、羽ジラミなどの寄生虫により羽毛がボロボロになる。
その結果、羽毛は空気を蓄えたり、雨を弾いたりすることができず、保温効果は低下し、体温を奪われ、その鳥は死に至ってしまうらしい。

想像以上に、鳥たちにとって水浴びは大事みたいだ。

鳥によって適当な深さは違うが、水場を傾けたり、中に小石や砂利などをうまく敷き詰めて深さに変化をつけて、大体1~3cmくらいの深さを作ると良いらしい。

ワニベさんは、美しい陶磁器を集めるのが好きだ。

デッキには、花瓶やお皿が飾られていたり、収納しきれなかったものが置かれている。
大きな平皿、ネズミが入らないようにひっくり返した壺、花瓶、、、
そんな様々な形の陶磁器たちに、雨水が浅く溜まったり深く溜まったりしている。

そこが、偶然、野鳥の水浴び場になっているのが面白い。

ただ、今回参考にした本には、「水は雨水でも維持できるが、中に寄生虫などが落ちているかもしれないので、時々水を取り替えて清潔に保ってあげる。不衛生だと鳥同士で感染症が広がる危険もある。」
とあるが、あくまでワニベさんは無意識的にやっていることなので、わざわざ水を取り替えてあげるなんてことはしない。

ここらへんの意見は難しい。
「自然界では溜まった雨水を人間がわざわざ取り替えてあげるなんてことはしないので、そこまで過保護になる必要もない」という専門家だっている。
「水を取り替えないことによる感染症が如何ほどリスクがあるのか」ついてのデータがない限りは、考え方の問題かもしれない。

地域にはそれぞれの環境に適した植物が自生していて、その植物を利用する動物もまた生息している。
そのため、緑といっても外国産の植物や園芸種を植えれば、一時的には鳥たちのためになっても、生物多様性の観点から見れば、本来は良くない可能性がある。

そのため、筆者は「自分の住んでいる地域には本来どんな植物が生育していて、鳥が利用するのはどの植物か確かめてから、植樹する種を決めるといいでしょう。」
「最終的に目指すところは、自分の住んでいる地域の自然環境が再現されたような庭になることではないかと思います。」と言う。

その土地にあった植物であれば、それを利用する昆虫なども周辺に生息しているので、やってくるようになる。するとそれを食べる昆虫やクモ、トカゲやヤモリ、さらにそれを食べに鳥が来るようになり、さまざまな生物が集まってくる。
そして、鳥たちは食べ物をもらう代わりに、木の実の種子などを遠くまで運んでいって撒くという役割を果たし、種子が発芽して、その地域に適した植物が育っていく。

その地にあった植物で構成されていれば、豊かな循環が生まれるということだ。

1973年と76年の航空写真を比較すると、ここらのエリアを開発する時、道路の開拓はしているものの、道路以外はあまり樹木を伐採していないことがわかる。

家を建てる時に敷地の樹木をどれだけ切ったかはわからないが、現在、ワニベさんの家の庭には在来の樹木が自生している。
ワニベさんは元々農学部森林科だったらしく、この亜高山帯の植生をよく理解していらっしゃった。
私にも樹木についての知識をたくさん教えてくれた。

この地にもともと生えている樹木を愛し、木の成長を見守っていた。

餌を野生動物たちに与えることについては、前回の記事「動物がやってくる庭 〜その2.   別荘地の野鳥への餌やり事情〜」で考察した。

そこで、この別荘地での餌やり事情や問題点について書いたので、そちらを読んでほしい。

前回の記事「動物がやってくる庭 〜その2.   別荘地の野鳥への餌やり事情〜」はこちらから🦉

人間が餌を与えることで野鳥を庭に招くのではなく、ゆくゆくは多様な木の実がなり、虫たちもたくさんいて、それを鳥たちが食べるという自然の流れがそれぞれの家の庭で形成されるためには、
「③餌を置く」以外の、「①水場をつくる」「②木を植える」「④小動物の住処をつくる」「⑤巣箱をかけてみる」が重要になってくる。

庭木に実がなり、虫がつき、それを鳥が食べるという自然の流れをつくるためには、やはり鳥の餌となる虫などの小動物の住処をつくることが重要だ。
著者が紹介していた小動物が集う庭にするための工夫は三つ。

①落ち葉をかき集めておく
ミミズや昆虫の幼虫などがやってくる。

②枯れ木を置いておく
枯れ木を置いておくと、その中にいろいろな虫が入り込み住処にする。

③大きめの石や廃材を積み上げておく
積み上げたものの間に空間が生まれ、トカゲやクモなど、小動物のよい住処になる。

ワニベさん家の庭には、デッキを自分で作った時の廃材がたくさんある。
そしてデッキを作ったのは20年前なので、長期の住処になっている。
ちらっとひっくり返してみてみると、なるほど、虫たちが幸せそうに暮らしていた。

巣箱は、木の洞や建築物の穴、隙間など、閉鎖的な空間を作って巣を作る鳥が利用する。
巣箱を使う鳥は、スズメの仲間、シジュウカラなどのカラ類、フクロウの仲間、ムクドリの仲間などで、大きさや穴のサイズによって使う鳥が違う。

巣箱をかけるのは、良好な繁殖場所を提供し、鳥たちの繁殖成功率を上昇させるためだ。
なので、雑につくって台風などで壊れてしまい、安全に繁殖できなければ本末転倒だ。

調べてみると、巣箱のつくり方やかける場所、かけるタイミング、メンテナンスの方法など、注意しなければならないことは結構多い。

なので、「野鳥が自然に集まる庭づくり」の最終ステップである「巣箱をかける」については、次回の記事で調べたことや聞いたことを織り交ぜながら、じっくり書こうと思う。

今はないが、数年前にシラカバの木に小さい巣箱を設置していたらしい。
すると、シジュウカラが一度そこで繁殖したとのこと。

さすが、ワニベさんは野鳥が喜びそうなことは徹底的にやり尽くしていた。

今回、「野鳥が集まる庭をつくろう」に出てきた5つのポイントに沿って、ワニベさん家の庭をおこがましくも考察させていただいたが、なんとワニベさんは全てのポイントを押さえていた。
ワニベさんに脱帽である。