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2022.06.01

#人々の生活と知恵

苔むす屋根は放置してはいけない?

林ラボ山荘の屋根はかなり苔むしていた。
しかし私は森の奥の魔女の家みたいで結構気に入っていた。

それに、苔による緑化事業、建物の屋上・壁面に苔を敷き詰める「コケ緑化」という言葉を聞いたことがあったため、
屋根が苔むしてしまっていても、断熱効果もありそうだし環境にも優しそうなイメージがなんとなくあった。

しかし、「なんとなく」はいけない。

調べると、「コケ緑化」は通常の屋根にそのままコケを生やすわけではない。
コケを付着させたパネルユニットを建物の屋上・壁面に敷き詰めて緑化する。 

出典:株式会社ヴァロール, "コケ緑化で 省エネを実現", 環境ビジネスフロントランナー2015, p.189-195
直接屋根材に生えてしまったコケを放っておくと、
屋根は常に水分を含んだ状態になり、建材自体が脆くなる。
さらに、常に水分を含んだ屋根材は放っておくと内部まで湿気が行き、内部の防水紙や木材まで腐ってしまう事もある。

家の寿命を長くするためにもコケをとることは大事であった。

前オーナーがコケ落としをどれくらいやっていたのかは不明だが、
なぜこんなに苔むしてしまったのだろうか。

屋根工事専門店の記事(参考:https://www.yaneyasan13.net/moss-mold-alga)に書いてあった、「苔むしやすい屋根」の要素が全て当てはまっていた。

 ① 近くに森がある
 ② 日当たりが悪い
 ③ 屋根の防水効果が切れている
 ④ 屋根材の表面がザラザラしている
 

①と②が環境要素、③と④が屋根材要素である。

日当たりが悪いのは「蓼科高原別荘地が」、ではなく、「林ラボ山荘が」である。

蓼科エリアは日照時間が長いことで有名だ。
他の別荘地と比較したときの大きなメリットだ。

しかし、日照時間は長いものの、林ラボ山荘のあるエリアは、ちょっとジメジメ。
それは、

 ・1500mあたりのエリアとは植生が一変し常緑針葉樹が多い。
  →落葉広葉樹の群落のエリアより年間で陽が当たりづらい。 

 ・標高が高いので、雪解けが遅い。また、山沿いはよく雨が降る。

 ・標高1700mのエリアは寒さがより厳しく、しかも、岩肌が露出している場所が多く家が建てづらい。
  →家の数が他のエリアより少ないため、そもそも切られる木が少なかった。


などの理由が挙げられる。
だが、これらの要因は一長一短だ。そのために、ここらは白駒池周辺の環境にも似た、苔むした神秘的な森の世界が広がっている。

ということで、コケを落とす意義もわかったし、高圧洗浄機も借りたし、いざ、コケ落とし。

ここらは、冬にたくさんの雪が降る地帯だが、
屋根の傾斜によって落雪させるためには、3寸勾配(16.7度)必要
5寸勾配(26.6度)以上あると頻繁に雪が落下し、つららや巻きだれの発生を防ぐことができる。

そして、林ラボ山荘は6寸勾配(31度)である。

6寸勾配を甘くみていた。

やる気十分、屋根に登ることを楽しみにしていたのだが、いざ、足袋を履いて屋根に登ろうとすると怖すぎる。
足袋を履いているのに滑る。
こんなところで一人で屋根から落下したら、しばらく誰にも見つけられなさそう。

、、、ということを原さんにいうと、

写真だけ見ると、あっさりできたかのように思うだろう。
しかし、原さん、一度落ちたらしい。
なのに何事もなかったようにケロッとしていた。
普通の人が落ちたら怪我するよ。

一度落ちてからは、さすがに木に綱をくくりつけて作業していた。

原さんがたくましいだけで、6寸勾配もある屋根の上に一人で登ってはいけないなと学んだ。
コケを落とすなら、誰かにいてもらった上で命綱をつけるか、業者に頼むかの二択だろう。