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2024.01.19

#標高1700メートルで犬と遊ぶ - 穴澤賢さん連載エッセイ「犬のために山に家を」

穴澤賢の連載エッセイ「犬のために山に家を」(第6話)

前回この『連載』に書いた通り、私は八ヶ岳に完全移住した。それから約2ヶ月が経ったが、特に困ることは何もない。それは5年間、鎌倉市腰越と山の家の2拠点生活をしてきたからで、土地勘もあるし、どこで何が買えるかもだいたい分かっているからだ。さらには地元に暮らす知り合いも出来たので、分からないことを聞けば教えてくれる。

市街地からは離れた山の麓なので静かだし、渋滞もない。一番近いスーパーでも車で10分ほどだが、混むことがないから苦ではない。腰越は江の島に来る観光客で週末ともなれば必ず渋滞して、未だに暴走族が走ってやかましかったから、環境的にはずいぶん良くなった。

何より嬉しいのは、山で暮らすようになってから、大吉と福助が妙に元気になったことだ。朝夕の散歩から帰るとドッグランでバトルするのが日課になり、動きもアクティブになった。腰越にいるときは、散歩で用が済んだらすぐ帰りたがり、家にいるときは寝たり起きたりダラダラしていたのと比べるとすごい違いだ。なんとなく少し若返った気がする。
 

これは周囲の犬飼いたちも言っているが、山に来ると犬は顔を輝かせて妙に元気になる。だからぜひ犬を連れて八ヶ岳に来てもらいたいと思うが、出来れば冬の八ヶ岳も知って欲しい。セカンドハウスや移住を考えているなら尚更、厳しい冬を知っておいた方がいい。そして、冬は冬で良さもある。

冬の八ヶ岳といえば「厳しい寒さ」というイメージではないだろうか。それは事実で、これを書いているのは1月中旬だが、標高1400メートルだと朝と夜はマイナス10℃くらいになる日も多い。さらにはマイナス15℃、蓼科高原別荘地は標高1600メートルくらいなのでマイナス20℃になることもある。実際、外に出ると寒いのだが、なぜか分からないが不快な寒さではない。

風の強い日が少ないのも影響しているのかもしれないが、横浜の町中を歩いているときの方が「さぶっ!」と感じることが多かった。気温としては低いのだが、空気がキンと乾いていて、普通の防寒着を着ていればそれほど寒く感じないのだ。これは私だけではなく、周囲の人も同じことを言っているので、来てみてもらえばその意味が分かると思う。

ただ、外がその気温だと室内は暖かくしなければいけない。私は築50年ほどの中古物件を買ったため、気密性は悪く寒冷地用のFF式大型ストーブを入れているが、普通の石油ファンヒーターだと恐らく太刀打ち出来ない。その他、薪ストーブなど何かしら強力な暖房が必要になる。

私が物件を買ったのは夏でそんなこと考えず、サマーハウスでいいかと思っていたが、秋になり寒くなり始めた頃になり、やっぱり冬も来たいと業者さんに相談して今のFF式を入れたので、これから物件を探す、あるいは新築を建てたいと思っている方は暖房のこともしっかり考えておいた方がいいと思う。

幸い蓼科高原別荘地にはそのあたりに詳しいアドバイザーの『原さん』がいるので、相談してみるのもいいと思う。原さんの家には何度か招いてもらったことがあるが、うちとは比べ物にならないほど暖かかった。

そんな冬の八ヶ岳だが、人間はちょっと寒くても犬は平気だ。チワワなど一部の犬種を除いて大喜びする。なにせ彼らは毛皮を着ているので、多少の寒さなんて関係ない。むしろいつもが暑いので、生き生きすると思う。ハスキー系が雪なんて見ると、恐らく狂喜乱舞レベルで大喜びするはずだ。

彼らにとっては残念なことに、八ヶ岳はそれほど雪が積もらない。標高は高いが決して雪国ではないのだ。5年通った経験上、ひと冬に15センチ以上積もるのは5回くらいではないかと思う。膝くらい積もったのは、これまで2回くらいしか経験していない。それ以外は積もっても5センチくらいで、雪遊びするには少し足りない。
私は若い頃、旅行会社に努めていたとき、冬の野沢温泉に2シーズン駐在していたことがあるが、あのあたりは1メートルくらい積もるのはザラで除雪車が通った後は道路は両側が雪の壁になる。野沢温泉に比べたら八ヶ岳は雪はとても少ないが、あまり積もると雪かきとか運転が大変なので、これくらいがちょうどいいと思っている。

犬連れで冬の八ヶ岳に遊びに来て、運良く雪が積もっていたらラッキーくらいに思って犬と雪遊びでもしてみて欲しい。きっと彼らは目を輝かせて飛び跳ねると思う。私が最初に物件を探しに来たのは2月頃だったが、そのときはたまたま雪が15センチくらい積もっていて、初めて雪を見る福助は「なにこれー!」と大はしゃぎしていた。
(編集担当注:蓼科高原別荘地ではもう少し雪が積もります。冬の間は基本的に銀世界で、ワンちゃんはいつでも雪遊びができます。)

私が冬の八ヶ岳を勧めるのは、一年を通して最も「暮らしにくい季節」からだ。暮らしにくいというのは、都会で暮らす人にとって、という意味だが、気温が低い、夜中に路面が凍結する、たまに雪が積もるという程度だが、慣れていないと驚くことも多いと思う。

けれど、冬の八ヶ岳が気に入れば、春夏秋は最高である。これは私が物件を探しているときにアドバイスしてくれた人から言われたことだが、実際にその通りだと実感している。犬にしてみればオールシーズンがパラダイスだろう。だからぜひ冬の八ヶ岳に来てみて欲しい。

前回紹介したように蓼科高原別荘地にある「レンタル別荘」から始めてみてもいいし、予約が取れないときは「MIC HOUSE」というペンションもある。ここは公言していないが、犬OKで部屋で一緒に泊まれるし、夕食も一緒に食べられる宿だ。しかもドッグランもある。一度来てみて、冬の八ヶ岳を体験して、犬が喜ぶかどうか確かめてみて欲しい。
 

冬の八ヶ岳がいいのは事実だが、注意点もあるのでそれも書いておきたい。まず、車は4WDで、スタッドレスタイヤであること。さきほど書いたように、標高1200メートルを越えると冬は路面が凍結していることもあるので、4WDが必須だ。FFやFRのノーマルタイアで雪が少しでも積もると滑って大変なことになるので、絶対にそれは避けて欲しい。

八ヶ岳に来るためだけにスタッドレスタイヤを買うのはもったいないので、そういう場合はレンタカーという手もある。事前にいえば4WDのスタッドレスタイヤは用意してもらえるところが多いので、活用してみるのもいいと思う(私も最初はそうだった)。

あと、運転するときは動物に注意すること。市街地は別として、山が近くなると道路に鹿がいるなんてことはよくある、特に夜は注意。しかもなかなか避けない。かと思えば突然飛び出してくることも稀にある。なので、昼夜問わず、いくら見通しのいいまっすぐの道でも60キロ以上出さないこと。

それ以上で走っていて、突然飛び出してきたらまず避けられない。殺すのも嫌だが、鹿と衝突すると恐らく車も大破する。鹿以外にも、タヌキ、ウサギ、キツネなどが出てくることがあるので、運転だけは十分に注意して欲しい。

あとは都会にいるときより、少しだけ厚着しておくこと。別にそれほど重装備する必要はないけれど、平地よりは多少は暖かくしておいた方がいい。暑ければ脱げばいいだけなので。それと、数日過ごして、犬と散歩するなら耳当てと手袋くらいはあった方がいいかも。

注意するのはそれくらいで、そんなに構えなくてもいいと思う。八ケ岳の冬は長いからまだ間に合う。出来ればぜひ冬の八ヶ岳に犬とお越しくださいね。
(つづく)
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる) 
 
1971年大阪生まれ。ライターで「またね、富士丸。(小学館文庫)」、「また、犬と暮らして」、「犬の笑顔がみたいから(共に世界文化社)」など犬関連の書籍を多数出版。音楽の連載やコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music(ワーナーミュージック・ジャパン)」を出版。

2015年には自らが欲しいと思ったペットグッズを作るブランド『DeLoreans』を立ち上げる。

BLOG「Another Days」 https://anazawamasaru.com/
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【連載】
 いぬのきもちWEBマガジン『犬のはなし』
 sippo『悩んで学んだ犬のこと』